【お知らせ】緊急避妊薬のスイッチOTC化に関する厚生労働省薬事審議会可決にあたっての声明文

緊急避妊薬のスイッチOTC化に関する厚生労働省薬事審議会可決にあたっての声明文

2025年9月2日

緊急避妊薬の薬局での入手を実現する市民プロジェクト

 

 2025年8月29日、厚生労働省の専門部会である薬事審議会にて緊急避妊薬のスイッチOTC化(医師の処方箋なく薬局等で購入できること)の方針が了承されました。私たち、緊急避妊薬の薬局での入手を実現する市民プロジェクト(略称:#緊急避妊薬を薬局で プロジェクト)は、2018年から緊急避妊薬のアクセス改善を求めて活動してきました。オンライン署名キャンペーンでは、18万筆を超える多くのご賛同の声に後押しされ、私たちは2021年にはOTC化の要望を提出し、参考人として議論に参加、その後2025年5月のスイッチOTC化の評価検討会議では構成員として参加致しました。

 緊急避妊薬は世界約90カ国で、必要になった時に処方箋の必要なくすぐに薬局で当たり前に買えるにもかかわらず、日本ではなぜここまでアクセスのハードルが高いのか。72時間というタイムリミットがある中で、必要になった時にすべての人が安心・安全にアクセスできる環境を整えてほしい。そのような、当事者や若者、医療従事者をはじめとする多くの市民があげた声が社会を動かし、OTC化が了承されたことについて、すべての人のSRHR(Sexual and Reproductive Health and Rights; 性と生殖に関する健康と権利)の保障につながる一歩だと思っています。本プロジェクト、及び緊急避妊薬のアクセス改善に向けてご支援、応援してくださった皆様、特にこれまでの経験や思いを伝えてくださった当事者の皆様に、この場を借りて深くお礼申し上げます。

 一方で、2021年の要望提出から4年、2016年の最初の申請からは9年という長期に渡る議論が積み重ねられ、その間私たちは「なぜこれほどまで議論や検証に時間がかかるのか」「いつまで経っても承認までの見通しが不透明」「誰のための緊急避妊薬なのか」といった思いを抱き続け、何度も絶望を感じてきました。そのため、今回のようやくの可決を手放しで喜ぶことはできません。向き合うべき課題は、まだあまりにも山積しています。

 

【今後期待したいこと】

 今回の緊急避妊薬のOTC化は、あくまですべての人のSRHR実現に向けた通過点です。2023年に日本で初めて認可された経口中絶薬のように、承認がされても、実質的なアクセスが広まらなければ、本末転倒であると言わざるを得ません。

 また、今回の政府発表や報道を受け、一部では緊急避妊薬のOTC化についてデマに基づく排外主義的主張と結びつける言説があることに驚きと危機感を覚えています。緊急避妊薬のOTC化は、多くの当事者が声を上げ、長い時間をかけあらゆるプロセスを踏み、実現したものです。緊急避妊薬を必要とする人の背景は多様であり、そのすべてのひとの人権を守る重要性を強調したいと思います。

 SRHRが守られる社会の実現には、すべての人が性についての科学的に正確な情報を得られるための包括的性教育の充実、緊急避妊薬を含む避妊の選択肢・アクセスの拡大、安全な中絶へのアクセス保障、性暴力の予防啓発、相談支援体制の充実をはじめ、包括的な取り組みが欠かせません。この緊急避妊薬のOTC化がその突破口となることを願っています。

 私たちの当たり前の権利が、当たり前に守られるために。緊急避妊薬の一層のアクセス改善もふくめ、私たちはこれからも、当事者の声を踏まえたSRHR政策の実現を求め続けます。

 

【課題・問題点等】

  • 運用について
    試験運用の際の要件となり、かねてから論点にもなっていた「保護者の同意」「年齢制限」が撤廃されたことは、大きな前進と考えます。
    一方、薬剤師の面前服用の条件が残ったことは遺憾です。
    緊急避妊薬の薬局での試験運用では、緊急避妊薬の面前服用を拒否した11件が販売不可となりました。FIGO(国際産婦人科連合)やWHOは、面前服用の強制は不必要とし、事前提供も推奨しています。以前面前服用を課していたスイスやイギリスでも撤廃されました。転売等の懸念は、正規のアクセスが限られている証拠です。必要なのは、誰もが安全かつ簡便に入手できる制度です。なるべく早い服用が望ましい薬である一方、面前服用が義務づけられるのは心理的安全性がない、不信感を覚えるといった声も届いており、面前服用は推奨にとどめ、服用者がどちらでも選択できることが望ましいです。スイッチOTC化の運用後に再度見直していくことを求めます。

 

  • 価格について
    国の試験運用では、29歳以下の64.4%が価格に不満を持っており、我々の調査では、6割が2000円未満を希望していました。緊急避妊薬が必要な状況にあるのに、値段が高額なため、入手をためらった、あきらめたという声も多くあります。店頭での販売価格を高くとも5000円以下とし、 若年者には無料にするなどの補助を設けてほしいです。

 

  • 薬局・薬剤師に求めること
    緊急避妊薬のアクセス改善のためには、全国に約6万ある薬局での取り扱いを増やすことが重要です。取り扱う薬局がどこかを分かりやすい状況提供と、取り扱える薬局の数を増やしていくことを求めます。まずは、緊急避妊薬の研修内容を公開し、どの薬剤師でもいつでも受講できるようにしていただきたいです。緊急避妊薬を求める人に対して、SRHRに基づき、ノンジャッジメンタルな態度で接することが入手の心理的ハードルを下げることに役立ちます。そして、緊急避妊や避妊、SRHRに関して全ての薬剤師が知っていて当たり前の知識となるよう、薬剤師養成課程への組み込みを求めます。

 

  • 議論の進め方の課題
    緊急避妊薬のOTC化については、世界ではすでに約90カ国で承認され、科学的根拠に基づく国際的な勧告も繰り返し示されてきました。一方国内では、根拠の乏しい不安が繰り返し漠然と提示され、そのたびに海外調査や試験運用が決まり、専門部会での可決までにあまりにも長い時間がかかってきました。その間にどれだけの女の子や女性、妊娠する体を持つ人が思いがけない妊娠の不安に追い詰められたのか、検討に関わった皆さまには真摯に向き合い、想像し、思いを馳せてほしいと感じます。
    日本は低用量ピルでも国連加盟国として最後、1999年にようやく承認されました。そのきっかけが勃起不全治療薬の早期承認だったことを思えば、今も同じ歴史を繰り返していると言わざるを得ません。
    避妊法の選択肢拡大や安全な中絶へのアクセス改善、包括的性教育の実現など、日本にはまだ多くのSRHR課題が残されています。なぜこれほど時間がかかったのかを検証し、再び同じ過ちを繰り返さないようにしてほしいと思います。今後も人権と科学的根拠に基づき、当事者の声を中心に据えた向き合った議論を進めていくことを強く求めます。